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吉永俊朗の内外情勢ぶった切り

吉永俊朗の内外情勢ぶった切り

外務省の定員増

国益を損なう外務省の定員増

                            経済・国際問題評論家  吉永俊朗

毎日新聞の報道によると、外務省が今後10年間で現在の定員5453人を2000人増やすとともに、大使館数を現在の117から150以上へ拡充する方針を打ち出し、外交力強化に前向きな次期安倍政権に働きかけているそうだ。はらわたが煮えくり返るとはこういうことをいうのである。外務官僚が国民の税金をどれだけ無駄遣いしているか、いかに国益を損なっているか、これまで表面化しただけでも枚挙にいとまがない。

外務省の呆れ果てた実態について、『お笑い外務省機密情報』『疑惑だらけの外務省』『踊る日本大使館』『外交官が「日本」を滅ぼす』『なぜ日本の外交官は世界からバカにされるのか』『なぜ外務省はダメになったか』『大使館なんかいらない』『さらば外務省!』など、私が読んだ中でも10指に余る書籍をすぐさま挙げることができる。その多くは元外務官僚の内部告発本である。『私とキャリアが外務省を腐らせました』には「外務省は流用・横領の金額が10万円単位ならクビにもならない」、『北朝鮮外交の真実』には「外務省の上から下まで、すべからく金銭感覚がない」とあり、『内から見た日本外交』には「ロクでもない連中が皆東大法学部であることは確かである。こういう連中が官僚の上層部を占めているのだから、国民に血の通った行政など期待できない」と断言している。
 
外務省はなぜ腐ったのか。その原因は日米開戦時に遡ると思う。『昭和史の謎を追う』には、米国への宣戦布告が遅れた責任者として井口貞夫参事官と奥村勝蔵一等書記官の名を筆頭に挙げてあるが、世紀の大失態を犯したこの二人は責任を追及されるどころか、外務次官に出世しているのである。したがって、ペルーの日本大使館占拠事件でも大失態を犯した青木大使の責任は不問になり栄転したというし、近刊『外交敗北』に北朝鮮外交で国益を大いに危うくしたと糾弾されている田中均氏の責任も一切問われない。
 
安倍晋三氏は著書『美しい国へ』にあるように「闘う政治家」を標榜している。同書に「日本の主権が侵害され、日本国民がさらわれているのに、外務省の一部の人たちは拉致問題を日朝国交正常化の障害としかとらえていなかった」とある。闘う政治家であれば、国家・国民のために闘わない外務省など要らないと思っているだろう。まして、日本国民の税金を私物化し、北朝鮮や中国など外国の国益に奔走する輩はもってのほかである。

東京商工リサーチ「TSR情報」(2006年9月7日号)




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